映像探偵団 

We are Footage Researchers

映画「マネーモンスター」を観ました

ほぼジョディ・フォスターと同時代を生きて来たので
こどもなのにこんな役を!
いい大学に入って学業専念かぁ、などと
特にファンということではなく、
同時代を生きているスター(マイケル・ジャクソンみたいな)
として、ずっと彼女の話題は追っかけてきました。

今回のこの映画、現在の世界、今の日本にタイムリー。
ジョディは監督として来日し、番宣でNHKとMXに登場。
マイナーな番組である「5時に夢中」では
まさかの「AD役」!

生放送中の番組で起こった事件をリアルタイムに。
コントロールルームでの
ジュリア・ロバーツ演じるディレクターの瞬時の判断、そして指示。
かっこいいです。
自分もディレクターになりたくて、
20代は生放送番組の下っ端として働いてましたが
あの現場を思い出して、
こんな状況気が狂いそう、って思いながら
ジュリア・ロバーツの演技に感服。
ジョディが演じてるようにも見えるし、
アカデミー賞を取った
エリン・ブロコビッチ」の演技も彷彿させました。


ジョージ・クルーニー演じる軽薄なキャスターは
今の日本の情報番組でも似たようなキャラをたくさん見かけるので
その体現だけでも「批判性」を感じるくらいで。
しかし、クルーニー親分、
こういうの演じることにかけては完璧ですね。

修正のきかない生放送。
たくさんのモニターから何を選ぶのか。
過去資料映像を探す時の迅速さ。
(過去放送映像データがすぐに出せるのか・・・と
 ここは職業病)

事件を起こした若い男に
観ているこちら側がストックホルム症候群になりました。
「時給14ドルで底辺の暮らし。
この都会では、沈まないようにするだけで精一杯」
彼の犯行動機は、母の遺産の家を売って得た600万ドルを
投資して瞬時に失ったものの、投資先は
「システムのバグ」を理由にして責任を取らない、
何が起こったのか知りたい、ということ。
これも自分の置かれてる状況と似てリアルすぎて。
(実家を売るか売らないか、貧乏人の最後の切り札ですから)
かつてバブル期には、父が同じような目にも遭いました。
そして時給14ドルは1,500円くらい。
最低賃金を1,500円に!という声が上がっている
今の日本では笑えません。
地方はもっと低い時給ですが
東京で暮らすにはこの時給ではやってけない。
まわりにたくさんいる非正規の女性たちの声も
オーバーラップしてきます。
私自身も「沈まないよう」ギャラ交渉する日々。

生放送を観ている大衆の描写も秀逸です。
今日の都知事辞職に絡む報道と
どこからか沸いてくる「民意?」
とても短いフラッシュ映像で繋いでますが、
これは私のこと?と思わせる重い毒があります。

もう映画のパンフレットって買わなくなってましたが
これは撮影秘話やインタビューを読みたくて購入。
この内容もいいです。ぜひ。
さすがハリウッドでは無敵の3人。
映画を愛し、自分の仕事を愛し、自分の果たすべき役割を実践してる
かっけぇ大人たち。
彼らじゃないとこの作品はできなかったかもしれません。
このところ洋画のエンドロールに、日本企業や日本人名が
出てくることが少なくなりましたが
SONYの文字をみて、ちょっとだけ誇らしさを取り戻しました。

ギョーカイにいて思うのはギョーカイ人ほど
忙しさを理由に他の人の作品を観ないなぁということです。
それが映画やテレビなどの映像作品の
質の低下につながっている気がします。

いろんな「自戒」を味わえるこの映画オススメです。

権利の塊

これ、自衛の意味も込めて書きます。

映像は権利の塊です。音楽や書籍より複雑です。
写ってるモノ、場所、そしてただの通行人、
背景の写真も無断使用になる可能性ありますよ。

先月、去年の仕事をご一緒したCM制作会社の方から電話いただきました。
権利の塊の見本のような映像をリサーチしてくれと。
五輪です。
昨年の仕事は権利者側に立つ所からの依頼だったので
リサーチ&試写の「権限」もありました。
コピーもできました。
そのデータをお渡しする時、消去するよう伝えています。
でも、最初だけ責任者がいて、その後のデータの受け渡しはADさんだけ。
渡す時、HDDを返却してもらう前、データ消去するよう伝えてたけど・・・

電話はその権利の塊の映像のご相談。
去年の仕事の担当者からの「紹介」、初めてお話しする方です。
電話の内容はその「権利の塊」の権利者や権利処理方法や連絡先等・・・
管理組織の名前もお知らせしました。
手元にある映像を「使い回し」前提で、許諾を得ようとする。
もしくは違法にアップされているネットの映像を仮編集してプレゼンする。
これ、とても怖いことなんです。
(3組織くらいに怒られました)


たくさんなんでもあるように思えるネットや有料ライブラリー、
実際に検索してみてください。
必要な映像、出てきますか?
商業目的は使用不可ってなってませんか?


五輪のスタジアム観客映像も要望、
観客の権利を全部一人ひとり取るんですか?
撮影許可を持つ放送局が
放送(送りっぱなし)するのは可能ですよね。
でもそれをCMで二次使用するのは全く別の話です。
スタジアムに行った時の自分の顔がいきなり
テレビCMに流れてたら、どうします?

五輪権利者が全部の映像を持ってるわけではないんです。
使用許諾の次は
その映像をどこが撮影していたのか、その管理部門はどこか。

以前違う業務で使用した、その時の権限だけの、
本来消えてないといけない映像が
「ある」のは問題なんです。
それを「うちから出してもらった」
なんてことになったら、また怒られてしまいます。廃業・・・

映像画像、その他データ受け渡しの時、契約書交わさないとマズイくらいに
「ネットで簡単に拾える」と思ってしまってる方が増えました。
プロなのに・・・

追記:5月12日、権利の塊は利権の塊でもありました。

「名を削る」仕事

「名を削る」いいかえれば「名を汚す?」
そんなことに陥りがちな仕事です。

企画概要もクライアントの意向も予算も把握できないまま
映像なり画像なり資料なり、リサーチと権利元を確認します。
いよいよ納品という間際にその使用交渉を開始。
権利元からは使用目的、費用、いつまでに回答すればいいのか、
という当たり前の返事が来ます。
・・・いや、私も意図、流れ、文脈、使われ方、わからないんですよ。
まるで子どもの使い状態。
必要な資料が揃ってないために、
今まで打ち合わせに参加していない私が
即席の企画書作成して権利元に送ったり。
そして「すいません、急なお願いで」とひたすら低姿勢のお願い。
ここはプロジェクトの責任者並みのプレッシャーです。
だって納品間に合わない!
数日間から数週間、気晴らしなんてできるものではありません。
完成作品をみたら
あれ?クレジット、権利元と約束した指定のものが入ってない。
あれ?こういう使い方だとまずいなぁ・・・
最近は成果物を提出するよう義務付けられているところも多いので
もうヒヤヒヤです。時には謝罪文をつけて送付することも。
この一連の流れ、メールも送付状も、自分の会社名と実名が常に記されてます。

(相手がその会社のどういうポジションか
責任とれる正社員なのか短期契約のスタッフか、
子会社か・・・案外「実態」はわからないものですよ。)

自分の名前が持っていた信用がどんどんマイナスに。
次の仕事にだって影響及ぼしかねません。
今の時代なら下手するとSNSで晒されてしまいます。
だから「名を削る」

その一方で「名誉」はほとんどありません。
完成作品の披露の場に行くことも、
何かの賞を取ったということも後で聞いて「へぇ」
その商品の帯に「美しい映像で綴る」と推薦文が書かれてて、
ああ、それそれ、私担当したんですわ・・・と内心胸を張ってるだけ。

そんな役割の人がたくさんいて成り立ってるんです。
そこに不満を持つ人はこんな仕事しません。
だから、うちは人を雇わない(雇えない)んです。

いろいろと経て、今、仕事を選ぶ基準はひとつです。
「あ、この人の依頼ならいいか」

将来裁判になるかもしれない案件に、自分の名前を使ってるんです。
自衛として、もしくは酷い目にあったとしても
自分を納得させるにはこれしかないんですよね。

現場力

人気ドラマのプロデューサーの話、プロジェクト立ち上がってから
「なにをしているんですか」と役割を聞かれ
「ただ現場にいるだけです」と。

その現場も最初から終わりまでいる必要を感じています。
役員出勤的に差し入れ持って(最近はそれもないですね)「どう調子は?」
数時間いて「じゃあとよろしく」だと見えないことたくさんあります。

現場で起きている問題の重要性、どこに責任があるのか
原因とその改善。
その全ては「お金の問題」にもなってきます。
最前線の現場を把握している人がトップにならないと、
企業としての判断は狂う感じがします。
見積書も現場を軽視する人の決まり文句は「だいたいいくら?ざっくりでいいから」

使う映像、撮影する場所、カメラは何を使うか、映像のクオリティをどのレベルにするか等
ざっくりでは計算できないことだらけです。

なぜかそういう人が出す見積もり金額は「300万円」
この300万円神話、わりと身近に何度も経験しました。
100万円じゃ足りないし、500万円だったら、高い?から受注できない・・・
間とって300万円なのかもしれませんが、
「それってポスプロ費でなくなってしまいますよ」
「それって映像使用料払ったら、人件費もでませんよ」
というのが続きました。
クライアントの要望を細かく聞いて
できること、できないことの幅を提示できる現場力が
以前よりも落ちてきてるのを実感しています。

できるかぎり現場へ。
その時間は「社内会議の説明用の資料」作成よりも
大事だと思います。

世の中は善意であふれている。

世の中は善意であふれている。

私は映像や音楽・画像の「権利処理」という言葉が嫌いです。
「事務処理」もなんか書類を右から左にハンコ押す感じ。
サラリーマンは気楽な稼業ときたもんだ的な
もしくはある世代の
「うちの女の子にやらせますんで」という言葉を連想します。
派遣さんに置き換えられてしまってる事務職も
プロとアマでは雲泥の差です。
時にはその会社の命運すら握ってるのでは?
電話一本の応対でとんでもないことになったり、
大きな仕事が消えることもあるわけで。
先日、日本が世界に誇る技術とテレビで紹介された女性が派遣社員で、
これが今の日本の現状か(闇か)とTwitterでも話題になりました。

私は「権利交渉」と言い換えたい。
その方がプロ感増すですよね。
「権利処理」の多くは、
権利者・協力者に、使用概要を説明し、その都度条件を話し合い、
最後にはお礼と完成作品の送付まで「仁義を通す」業務。
相手さんにことのほか善意を示され、もしくは喜ばれ、
それならご協力しましょう!今回だけですよ、
というご厚意をいただくことも。
雅なところの担当から
「今後はこういうことも対応していくべきなんですよねぇ(笑顔)」
などと相談されると、畏れ多いです。
以前は縦書き手書き申請書を送付、
達筆な許諾書の入った封書が届くのを待つのが
当たり前だったところから
「あ、アドレス教えてください」「へ?メールでいいんですか?」
許諾書がメールで即日届く。
ここ数年の変化はすごいです。
だからこそ、ちょっとコワイ。
「日本の誇る技術」も「権利交渉」も経験の積み重ねです。

それを蔑ろにしてると
足元でとんでもないことが起きてることに気づかないものです。
年の瀬の天皇誕生日の夜の電話
「権利処理をお願いしたいんです」
祝日の電話にも対応しますが、要件を伺うと
年末に使う映像、それも海外数カ国分の権利処理。
「ムリです。責任持てません。連絡しようにも
すでに海外はクリスマス休暇。
通常は1ヶ月あっても厳しい交渉です」
とお断りせざるを得ませんでした。
(それでも何箇所かは権利元に知ってる人がいたので
 とアドバイスはしたんですよ。
 だってそのADさんがこんな事態を引き起こしたわけではないはずで)

どうしてこんなことになるのか。
外注、下請け、派遣さん・・・
知識、経験を積み重ねていくことができない仕組みになってるからです。
で、今、次のステージに入ってる気がします。
下請け同士の互助精神。
それから権利者の同情心。
「ああ、またですかぁ、おたくも大変ですねぇ。
 ええ、いいですよ今回は特別に
 一応許諾出しますけど、書類は後でも・・・」
世の中の「下請けさん派遣さんお気の毒、上がわかってないからねぇ」
という善意で回ってること、ひしひしと感じる年の瀬です。

(業務まだ終了してないため、だーっと書きました。正月あけ文章修正します)

では良いお年をお迎えください。

8年ぶりの安眠

先日、仕事をひとつ断りました。
8年以上続けたプロジェクト。
内容が変わっても、以前からの担当ということで
ご依頼いただいてきましたが、
業務遂行して請求書発行段階での値切り。
それから「前もやってるからカンタンでしょ」
「ちゃちゃッと電話で答えてよ」的な
タダ働き分が増えまして。
最近はむしろ、以前、大丈夫だったことがどう翻るか、
裁判沙汰になるかもしれない、そんな精神的な負担が増えてるのに、
そこを評価されないんじゃなぁ・・・と。

うちみたいな超極小会社が元請けに何言ったって、
たぶん「欠席裁判」状態でうちのせい。
こんなことをブログにあげるって・・・と悩みますけど
これは自衛のためでもあります。

今まで「我慢」「穏便に」というのが
オトナの対応とされてきましたが、
値下げされてまで、その仕事請けてる時間はない、
もっとちゃんとしたお仕事に時間を費やさないと。
マンションくい打ちデータ流用などみても、
元請けが「知らないふり」してるんじゃなくて
根本的に「丸投げしつづけて必要な知識すら持ち合わせてない」感じ。
だから現場の業務に精通してなくて
ただ、下請けの業務費を叩くのが「仕事」と勘違い?
そんなアブナい日本になってきてるようです。


責任者「前の担当者がちゃんと説明してなくて・・・」
   「今回予算が少なくて・・・」

私「予算がないなら、今後の業務はご自分たちでやればいい」

納品まで1ヶ月もない。
これでなにかトラブル発生したら、うちのせいになってしまいます。
いまさら「間にあわなかったら、不承諾だったら・・・」という
精神的負担に見合う業務費は見込めません。
それ以前に、今やってる他の業務に支障をきたします。


本来貰えた業務費、例えばそれが1日分だとして、
その時間があれば・・・
「他の仕事に充てられた=収入が増えていた」
「専門知識を得るための読書など勉強に充てられた」
「介護帰省1日追加に充てられた」
映画館へも行けたし
カフェで本でも読めたかしら・・・

時差関係なく海外とのやりとり、
国によって違うバカンスの取り方、
6月から8月末まで「返事いつ来るかなぁ」と
お盆もずっと不安だらけ。
年末から春にかけても各国のホリデーシーズンを頭に入れて
夜中のメール対応・・・
明け方、NG喰らった時のショック。
映像差し替えでいけるか?
ディスクプレス直前に止められるか?
そりゃ不眠症にもなります。

介護帰省して、
病院の電話ボックスに閉じこもってメールしながら、
ドキドキすることもないんです。


義理立てなんかせずに、もっと早くに降りちゃえば良かった。

いい仕事はいい報酬とともに来ます。

プロデューサーの方へ

弊社にはいわゆるADさんからのお問い合わせが多いです。
自分も経験ありますから、そのへんの流れ、わかります。
でも、これからは映像や画像を探す前に
プロデューサーの「適切な指示」が必要かと。
じゃないと、裁判になったりクレームが来たりして
「知らなかった」「なんでその時に報告しない」って
とんでもないことになりますよ。
責任取るのはプロデューサーさんですし。

最初の問い合わせ時に
その映像をホントに使うのか
使用範囲(どの国まで含みますか?)
使用目的(WEBでも使いまーすって、それワールドワイドの権利ですよ)
で、いつまでに権利元との契約書かわす予定ですか(先払い多いですよ)

これを把握してないADさんが、
「〇〇の映像さがしてこーい」って言われて
途方にくれて、弊社に金曜の夜に電話、日曜午前までにマスターデータ送れ
なんていう発注がくるわけですね。

たまに「単に内輪のプレゼンで使いたいだけなんです」って。
いやいや内輪の?ご家族じゃないですよね。
プレゼンっていってもちゃんと使用料は発生しますよ。
それにネットで集めた映像や写真で企画通っても
その映像や写真、使えないこと多いですよ。
そういうケース、ホントに多いですよ。

ADさんにとってプロデューサーやディレクターが絶対的存在、
で、「クライアントさんがこういってまして」というのもわかるんです。
でも、その力関係に、弊社関係ないですよね。
よく「クライアントが」「うちのプロデューサーがこういってまして」
だったらその人にこちらからご説明しましょうか。

いよいよ最終判断ってところで、使用条件や使用料が伝わってない?
「なんで、このADさんのADをやらないといけないの?」
慌てて夜中にかかってくる電話にそう思うことにもなりがちです。
土日対応いただけますか?って
対応しようにも、まず他がお休みなんですよ、動きようないです。

あ、ここまで書いて、えらそーにって思いますよね。
どうぞ。コワいですから。
海外のライブラリー映像、たった10秒の契約書の読み込みや
裁判沙汰の恐怖、違反して5倍の使用料・・・
せっかく「御社ですから安くしますよ」
「付き合い長いですから、すぐマスターだしますよ」
って言ってくれるライブラリーさんを巻き込みたくないですし。

プロデューサーさんには
せめてADさんが外部に依頼する前に
たくさん出てる著作権関係の本(音楽とか映像とか福井先生のとか)
数冊は教科書として読むようにご指導ください。
それから「映像を探す」ことを指示してください。
うちが「肖像権について教える」はめになるので。

ちなみに最近のニュースです。

クリエイティブ業務に関わる皆さまへ
有料写真、インターネット上の無断使用で著作権侵害が認められ勝訴
https://www.atpress.ne.jp/news/71125

映像探偵現る!

映像探偵団、というブログ名にしてますが
なかなか守秘義務もあって、
そのうえTwitterFacebookも、
なんて思うとブログもなかなか更新できませんが。

弊社Facebookにあげました。
これぞ映像探偵さん!

ヒマナイヌ川井さんのブログ
1948年に東京で撮影されたあの35mmフィルムの正体がわかった!!
- himag http://himag.blog.jp/45957239.html

この過程、番組にしてくれないかと思うくらいで。
あと、まだ確認してませんが、
元の映画、マイケル・ジャクソンの「THIS IS IT」にも
一瞬使われてたかもなー。
いや、日本のシーンはなかったんですけど。
これは個人的な趣味の範囲で「映像探偵」になってみます。

後日談:この映像使って、1本仕上がりました。