映像探偵団 

We are Footage Researchers

「名を削る」仕事

「名を削る」いいかえれば「名を汚す?」
そんなことに陥りがちな仕事です。

企画概要もクライアントの意向も予算も把握できないまま
映像なり画像なり資料なり、リサーチと権利元を確認します。
いよいよ納品という間際にその使用交渉を開始。
権利元からは使用目的、費用、いつまでに回答すればいいのか、
という当たり前の返事が来ます。
・・・いや、私も意図、流れ、文脈、使われ方、わからないんですよ。
まるで子どもの使い状態。
必要な資料が揃ってないために、
今まで打ち合わせに参加していない私が
即席の企画書作成して権利元に送ったり。
そして「すいません、急なお願いで」とひたすら低姿勢のお願い。
ここはプロジェクトの責任者並みのプレッシャーです。
だって納品間に合わない!
数日間から数週間、気晴らしなんてできるものではありません。
完成作品をみたら
あれ?クレジット、権利元と約束した指定のものが入ってない。
あれ?こういう使い方だとまずいなぁ・・・
最近は成果物を提出するよう義務付けられているところも多いので
もうヒヤヒヤです。時には謝罪文をつけて送付することも。
この一連の流れ、メールも送付状も、自分の会社名と実名が常に記されてます。

(相手がその会社のどういうポジションか
責任とれる正社員なのか短期契約のスタッフか、
子会社か・・・案外「実態」はわからないものですよ。)

自分の名前が持っていた信用がどんどんマイナスに。
次の仕事にだって影響及ぼしかねません。
今の時代なら下手するとSNSで晒されてしまいます。
だから「名を削る」

その一方で「名誉」はほとんどありません。
完成作品の披露の場に行くことも、
何かの賞を取ったということも後で聞いて「へぇ」
その商品の帯に「美しい映像で綴る」と推薦文が書かれてて、
ああ、それそれ、私担当したんですわ・・・と内心胸を張ってるだけ。

そんな役割の人がたくさんいて成り立ってるんです。
そこに不満を持つ人はこんな仕事しません。
だから、うちは人を雇わない(雇えない)んです。

いろいろと経て、今、仕事を選ぶ基準はひとつです。
「あ、この人の依頼ならいいか」

将来裁判になるかもしれない案件に、自分の名前を使ってるんです。
自衛として、もしくは酷い目にあったとしても
自分を納得させるにはこれしかないんですよね。

現場力

人気ドラマのプロデューサーの話、プロジェクト立ち上がってから
「なにをしているんですか」と役割を聞かれ
「ただ現場にいるだけです」と。

その現場も最初から終わりまでいる必要を感じています。
役員出勤的に差し入れ持って(最近はそれもないですね)「どう調子は?」
数時間いて「じゃあとよろしく」だと見えないことたくさんあります。

現場で起きている問題の重要性、どこに責任があるのか
原因とその改善。
その全ては「お金の問題」にもなってきます。
最前線の現場を把握している人がトップにならないと、
企業としての判断は狂う感じがします。
見積書も現場を軽視する人の決まり文句は「だいたいいくら?ざっくりでいいから」

使う映像、撮影する場所、カメラは何を使うか、映像のクオリティをどのレベルにするか等
ざっくりでは計算できないことだらけです。

なぜかそういう人が出す見積もり金額は「300万円」
この300万円神話、わりと身近に何度も経験しました。
100万円じゃ足りないし、500万円だったら、高い?から受注できない・・・
間とって300万円なのかもしれませんが、
「それってポスプロ費でなくなってしまいますよ」
「それって映像使用料払ったら、人件費もでませんよ」
というのが続きました。
クライアントの要望を細かく聞いて
できること、できないことの幅を提示できる現場力が
以前よりも落ちてきてるのを実感しています。

できるかぎり現場へ。
その時間は「社内会議の説明用の資料」作成よりも
大事だと思います。

世の中は善意であふれている。

世の中は善意であふれている。

私は映像や音楽・画像の「権利処理」という言葉が嫌いです。
「事務処理」もなんか書類を右から左にハンコ押す感じ。
サラリーマンは気楽な稼業ときたもんだ的な
もしくはある世代の
「うちの女の子にやらせますんで」という言葉を連想します。
派遣さんに置き換えられてしまってる事務職も
プロとアマでは雲泥の差です。
時にはその会社の命運すら握ってるのでは?
電話一本の応対でとんでもないことになったり、
大きな仕事が消えることもあるわけで。
先日、日本が世界に誇る技術とテレビで紹介された女性が派遣社員で、
これが今の日本の現状か(闇か)とTwitterでも話題になりました。

私は「権利交渉」と言い換えたい。
その方がプロ感増すですよね。
「権利処理」の多くは、
権利者・協力者に、使用概要を説明し、その都度条件を話し合い、
最後にはお礼と完成作品の送付まで「仁義を通す」業務。
相手さんにことのほか善意を示され、もしくは喜ばれ、
それならご協力しましょう!今回だけですよ、
というご厚意をいただくことも。
雅なところの担当から
「今後はこういうことも対応していくべきなんですよねぇ(笑顔)」
などと相談されると、畏れ多いです。
以前は縦書き手書き申請書を送付、
達筆な許諾書の入った封書が届くのを待つのが
当たり前だったところから
「あ、アドレス教えてください」「へ?メールでいいんですか?」
許諾書がメールで即日届く。
ここ数年の変化はすごいです。
だからこそ、ちょっとコワイ。
「日本の誇る技術」も「権利交渉」も経験の積み重ねです。

それを蔑ろにしてると
足元でとんでもないことが起きてることに気づかないものです。
年の瀬の天皇誕生日の夜の電話
「権利処理をお願いしたいんです」
祝日の電話にも対応しますが、要件を伺うと
年末に使う映像、それも海外数カ国分の権利処理。
「ムリです。責任持てません。連絡しようにも
すでに海外はクリスマス休暇。
通常は1ヶ月あっても厳しい交渉です」
とお断りせざるを得ませんでした。
(それでも何箇所かは権利元に知ってる人がいたので
 とアドバイスはしたんですよ。
 だってそのADさんがこんな事態を引き起こしたわけではないはずで)

どうしてこんなことになるのか。
外注、下請け、派遣さん・・・
知識、経験を積み重ねていくことができない仕組みになってるからです。
で、今、次のステージに入ってる気がします。
下請け同士の互助精神。
それから権利者の同情心。
「ああ、またですかぁ、おたくも大変ですねぇ。
 ええ、いいですよ今回は特別に
 一応許諾出しますけど、書類は後でも・・・」
世の中の「下請けさん派遣さんお気の毒、上がわかってないからねぇ」
という善意で回ってること、ひしひしと感じる年の瀬です。

(業務まだ終了してないため、だーっと書きました。正月あけ文章修正します)

では良いお年をお迎えください。

8年ぶりの安眠

先日、仕事をひとつ断りました。
8年以上続けたプロジェクト。
内容が変わっても、以前からの担当ということで
ご依頼いただいてきましたが、
業務遂行して請求書発行段階での値切り。
それから「前もやってるからカンタンでしょ」
「ちゃちゃッと電話で答えてよ」的な
タダ働き分が増えまして。
最近はむしろ、以前、大丈夫だったことがどう翻るか、
裁判沙汰になるかもしれない、そんな精神的な負担が増えてるのに、
そこを評価されないんじゃなぁ・・・と。

うちみたいな超極小会社が元請けに何言ったって、
たぶん「欠席裁判」状態でうちのせい。
こんなことをブログにあげるって・・・と悩みますけど
これは自衛のためでもあります。

今まで「我慢」「穏便に」というのが
オトナの対応とされてきましたが、
値下げされてまで、その仕事請けてる時間はない、
もっとちゃんとしたお仕事に時間を費やさないと。
マンションくい打ちデータ流用などみても、
元請けが「知らないふり」してるんじゃなくて
根本的に「丸投げしつづけて必要な知識すら持ち合わせてない」感じ。
だから現場の業務に精通してなくて
ただ、下請けの業務費を叩くのが「仕事」と勘違い?
そんなアブナい日本になってきてるようです。


責任者「前の担当者がちゃんと説明してなくて・・・」
   「今回予算が少なくて・・・」

私「予算がないなら、今後の業務はご自分たちでやればいい」

納品まで1ヶ月もない。
これでなにかトラブル発生したら、うちのせいになってしまいます。
いまさら「間にあわなかったら、不承諾だったら・・・」という
精神的負担に見合う業務費は見込めません。
それ以前に、今やってる他の業務に支障をきたします。


本来貰えた業務費、例えばそれが1日分だとして、
その時間があれば・・・
「他の仕事に充てられた=収入が増えていた」
「専門知識を得るための読書など勉強に充てられた」
「介護帰省1日追加に充てられた」
映画館へも行けたし
カフェで本でも読めたかしら・・・

時差関係なく海外とのやりとり、
国によって違うバカンスの取り方、
6月から8月末まで「返事いつ来るかなぁ」と
お盆もずっと不安だらけ。
年末から春にかけても各国のホリデーシーズンを頭に入れて
夜中のメール対応・・・
明け方、NG喰らった時のショック。
映像差し替えでいけるか?
ディスクプレス直前に止められるか?
そりゃ不眠症にもなります。

介護帰省して、
病院の電話ボックスに閉じこもってメールしながら、
ドキドキすることもないんです。


義理立てなんかせずに、もっと早くに降りちゃえば良かった。

いい仕事はいい報酬とともに来ます。

プロデューサーの方へ

弊社にはいわゆるADさんからのお問い合わせが多いです。
自分も経験ありますから、そのへんの流れ、わかります。
でも、これからは映像や画像を探す前に
プロデューサーの「適切な指示」が必要かと。
じゃないと、裁判になったりクレームが来たりして
「知らなかった」「なんでその時に報告しない」って
とんでもないことになりますよ。
責任取るのはプロデューサーさんですし。

最初の問い合わせ時に
その映像をホントに使うのか
使用範囲(どの国まで含みますか?)
使用目的(WEBでも使いまーすって、それワールドワイドの権利ですよ)
で、いつまでに権利元との契約書かわす予定ですか(先払い多いですよ)

これを把握してないADさんが、
「〇〇の映像さがしてこーい」って言われて
途方にくれて、弊社に金曜の夜に電話、日曜午前までにマスターデータ送れ
なんていう発注がくるわけですね。

たまに「単に内輪のプレゼンで使いたいだけなんです」って。
いやいや内輪の?ご家族じゃないですよね。
プレゼンっていってもちゃんと使用料は発生しますよ。
それにネットで集めた映像や写真で企画通っても
その映像や写真、使えないこと多いですよ。
そういうケース、ホントに多いですよ。

ADさんにとってプロデューサーやディレクターが絶対的存在、
で、「クライアントさんがこういってまして」というのもわかるんです。
でも、その力関係に、弊社関係ないですよね。
よく「クライアントが」「うちのプロデューサーがこういってまして」
だったらその人にこちらからご説明しましょうか。

いよいよ最終判断ってところで、使用条件や使用料が伝わってない?
「なんで、このADさんのADをやらないといけないの?」
慌てて夜中にかかってくる電話にそう思うことにもなりがちです。
土日対応いただけますか?って
対応しようにも、まず他がお休みなんですよ、動きようないです。

あ、ここまで書いて、えらそーにって思いますよね。
どうぞ。コワいですから。
海外のライブラリー映像、たった10秒の契約書の読み込みや
裁判沙汰の恐怖、違反して5倍の使用料・・・
せっかく「御社ですから安くしますよ」
「付き合い長いですから、すぐマスターだしますよ」
って言ってくれるライブラリーさんを巻き込みたくないですし。

プロデューサーさんには
せめてADさんが外部に依頼する前に
たくさん出てる著作権関係の本(音楽とか映像とか福井先生のとか)
数冊は教科書として読むようにご指導ください。
それから「映像を探す」ことを指示してください。
うちが「肖像権について教える」はめになるので。

ちなみに最近のニュースです。

クリエイティブ業務に関わる皆さまへ
有料写真、インターネット上の無断使用で著作権侵害が認められ勝訴
https://www.atpress.ne.jp/news/71125

映像探偵現る!

映像探偵団、というブログ名にしてますが
なかなか守秘義務もあって、
そのうえTwitterFacebookも、
なんて思うとブログもなかなか更新できませんが。

弊社Facebookにあげました。
これぞ映像探偵さん!

ヒマナイヌ川井さんのブログ
1948年に東京で撮影されたあの35mmフィルムの正体がわかった!!
- himag http://himag.blog.jp/45957239.html

この過程、番組にしてくれないかと思うくらいで。
あと、まだ確認してませんが、
元の映画、マイケル・ジャクソンの「THIS IS IT」にも
一瞬使われてたかもなー。
いや、日本のシーンはなかったんですけど。
これは個人的な趣味の範囲で「映像探偵」になってみます。

後日談:この映像使って、1本仕上がりました。

よく見るのに、いざとなると見つからない使えない映像

先日もこんなお電話頂きました。
「映像探すだけでもお金かかりますか?」

はい、会社名のまんまです。
映像探すのを業務として、ホームページにも記載しております。
若い感じの方に多いので、ADさんなんでしょう。
「他の人が2週間頑張っても見つからない映像を
 あのライブラリーににあるはず、もしくはあのルートを使えば?
 とお答えするのを業務にしてるんです」
って、まぁ言いたいところですが。
たぶんネットで検索したらすぐ出てくるのに、そんなんで金取るの?
と思う方もいらっしゃるとは思います。
そういう方のために、弊社サイトでは
各映像ライブラリーのリンクも用意してます。

で、実際ググると、すぐに見つかる場合も。
でも、それって他国のテレビ局制作番組の
「違法」に個人がアップした映像だったり。
世界有数のライブラリーでも、
キーワード入れるだけで目的の映像に
たどり着くのは難しいです。
動物だと
ゾウでもアフリカゾウアジアゾウボルネオゾウ
産業革命っていつの産業革命のことですか?
え?それって動画ある時代じゃありませんよ・・・

ライツフリーを謳ってる有料ライブラリー以外は
商業ベース(CM等)に使うのはNGだったり、
撮影した場所への別途申請や、撮影時の協力者への連絡が必要だったり。
(いきなりカメラ持って行って、ライオンの決定的瞬間、撮れませんよね。
 だいたいが研究者の協力のもと、何ヶ月もかかった貴重な映像です。)

だからうちでは実際のリサーチの前に
使用目的と使用範囲を確認しております。
使用目的を伺った段階で
「あ、探しても徒労に終わるな」と思うことも多いです。
商業ベースの場合、使用料がそれなりに発生するので
そこの予算確保してあるかも重要です。
(先日も権利者見つかったのに、予算合わずに見送り。
 地球の裏側まで、時差関係なく連絡した結果なのに。
 業務費請求時に、使わなかったことを理由に
 一度もお話したことのない責任者さんから
 値下げを言われたりすると、もうトホホ・・・)

クライアントさんにプレゼンする前に
本当にその映像が使えるのか確認してからにした方がいいですよ、と
以前、サルより賢い人間、というCMで使う
「おバカなサルの映像」の要望にお応えできなかった自分は思うのです。

TPPの知的財産権と協議の透明化を考えるフォーラム から あまちゃん絵について

TPPの知的財産権と協議の透明化を考えるフォーラム
の「TPP知財条項への緊急声明案の公開と、ご意見・賛同の呼びかけ」に
賛同表明しました。


あまちゃん」が大ブームになり、そこから派生した二次創作も
多種多様です。
プロアマ問わず「あま絵」をTwitter上にあげる「絵師」さんたち。
ドラマのキャラクターを自由に遊ばせて物語をつむぐ「作家」さんたち。
ミニチュアや小道具など手作業で作り出す「美術さん」たち。
コミケ出身の方もいるので、
いままで日本特有の曖昧で、阿吽の呼吸で楽しんできたファンと、
「愛ある二次創作」として「愛のある黙認」をしてきてくれた権利者、
幸せな関係が放送終了後も続いてました。
そして春からの再放送が決定し、またその気運が盛り上がっています。
「あま絵」から、現在放送中の「マッサン」にその流れがつづき、
公式がマッサン絵を募って公開、ドラマ出演者も
自分たちの出演部分を素敵に描いてくれた作品をみて
「みんなのモチベーションになった」と喜んでくれているとも聞いてます。

テレビ離れ、そしてSNSへ流れてしまっていた人たちを呼び戻して、
幸せなテレビ視聴熱を作りだしてるこの現状を
これからも萎縮することなく維持していければ・・・

これからもTPPについては注視していかないと、と思っています。